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備忘録、アニメ・漫画の感想・考察など

『ルックバック』の魅力について

この記事では、漫画、ルックバック(藤本タツキ先生)を読んだ感想と、その魅力などについて考えていきます。いわゆる、ここ好き、とか、ここ凄いなとか、こういう要素が魅力なんだという分析とか、そういう感じです。
文章のみのため少々冗長な所があります。
ネタバレを含むので未読の方はご注意ください。

 

 

・読みやすい
 なぜ読みやすいのか?
 ルックバックの読みやすさを構成する要素は様々だと思うが、ここではその1つとして、視線誘導を挙げる。どういった方法で視線誘導がなされているか、次のシーンについて考える。
 パラレル世界(仮)にて藤野が京本を助けた後、京本の手から四コマが風で飛ばされ、扉の隙間に入るシーン。このシーンではコマと明暗が、視線誘導としての働きが大きいと感じる。
 ①コマ
 京本の手から離れた四コマが飛んでいくコマでは、左上が高い斜めったコマであり、左上には四コマの紙が位置する。これによって紙が左上に飛ばされた感が伝わりやすいようになっている。
 ②明暗
 このシーンでは光源は窓から差し込む光である。しかしコマによって明るい場所が変わっているのがわかる。一コマ目では窓とカーテンのみ明るく、二コマ目では加えて紙の上あたりが明るく、三コマ目では扉下部が明るい。これはおそらく光源を元に忠実に明るい所や影を決めているわけではない。どこを暗くし、どこを明るくすると理解しやすいか、それを基準に決めてると思う。

 

・表現がわかりやすく、それでいてさり気ない

何が起こってるかが画でほぼ完結する。
 下記に①②と例を挙げる。
 ①序盤において、⑴同級生に絵が上手いと褒められる藤野、その藤野より絵が上手い京本を出し、⑵スケッチブックを重ねる藤野を出し、⑶京本の家の廊下に大量に積まれたスケブを示す。 これにより京本の努力や凄みを効果的に(一コマで)可視化させた。⑴⑵で読者と共通認識を構築し、それを⑶で活かした形だと思う。
 ②藤野が同級生に、「中学生になっても描くの?」と問われるシーン。ここでは西日(夕日)であると最初のコマから分かる。その後のコマも窓の外と教室の内側で明暗差があり、やはり日が落ちてきている時間だと伝わる(絵的にも映える)。日が傾くまで藤野は絵を描いてることを示している。こういった、手数が少なく(それ専用の話だったりコマだったりに割いていない)シンプルに、それでいてさりげなく表現していること。

 

・演出
 京本にベタ褒めされた藤野は雨の中踊りながら帰る。このシーンにおいて雨は次の2つを補強する役割を担っている。
 ①(雨の中でも)踊るほど嬉しい藤野。
 ②(雨に濡れたままでも)帰宅して即漫画を描くほど熱量が生まれた藤野。
タツキ先生が雨を先に考えて上記のシーンを決めたのかそれとも逆か思考の順序は不明だが、描きたい表現を効果的に演出するためのイベント/アイテムという概念を今回知った。創作者=創作世界内のあらゆるモノをほぼ自由にできる存在で、創作世界内のモノは、物語のシーンを効果的に演出させるための道具にだってできると分かった。

 

・藤野というキャラクターの魅力
 藤野は負けず嫌いで、しかし腐らずひたむきに努力できる。褒め言葉には内心喜んでるが背伸びしてるのか表では素直に受け取らず、少し調子に乗ったような返しをする。このように、人間味があり、努力家という好印象な面も併せ持つ。


・どちらともとれる表現

学級新聞が配られ、努力した末に京本に追いつけないと悟った藤野はおそらく涙を浮かべ、拭ったと推測する(又は、単に衝撃で後ろに回すのを忘れていたか)が、あえて分からないように、カメラが映そうとしていない。泣いてると分からなくさせるがどっちともとれるような表現(例えば、雨が丁度降ってきて雨か涙か分からないような表現)は、そのキャラが泣く姿を見せまいとしてるように感じるし、泣いてたのかな?と想像できる余地を半分残されたように感じる。

 

・京本の四コマではタイトルと作者の名前が小さく、性格を表している。
・京本は美大に行き、シャークキックは藤野のみで連載するが、ペンネームは藤野キョウのまま。
・同じ言葉をセリフ中に2回使わせて、動揺?している藤野を表現。「なんていうか…」
・京本の部屋に滑り込んだ四コマが二度目の役割を追う。
 「出てくるな!」を一コマ目に持ってくることによって、パラレル(仮)京本の運命を変えることとなった。

 

以上です。